↑ 「宇都宮の名店」カマシマさんがこうしたお店のコンセプトを堂々とホームページに掲げることは、現代の時計業界への問題提起でもある。
▼東横インは全国同じ造りで素晴らしい
私はビジネスホテルの東横インの超ヘビーユーザーなのですが、それはなぜかというと、全国どこでも部屋が同じ造りで安心感があるためです。プライベートで旅行するときはそこそこ良いホテルにも泊まりますが、あくまでも仕事の出張における定宿は東横インです。
というのも、僕はマスゴミの人間であるため、ホテルで原稿を書く必要があるのです。余裕があるときは出張先でメシを食いに行ったりしますが、緊急の執筆依頼の場合はホテルにチェックインしてすぐ原稿というパターンは日常茶飯事です。
その際、いつも同じ空間だと集中して執筆に専念でき、第二の事務所感覚で東横インを使うことができます。東横インは全国どこにでもあり、とにかく画一的な造りなので、とても助かるというわけです。
( ↓ )こんな本も出ていますが、はい、「クセになる」どころか、「中毒になる」魅力が東横インにはあります(笑)。
▼“東横イン化”している高級時計屋
さて、本題です。今回は何を言いたいのかといいますと、高級時計屋の話です。
最近、時計屋が全国どこでも、東横インのように同じ雰囲気になっています。それは、メーカーが指定する什器を入れることが契約の条件になっていたりするため、同じブランドを扱っている店だと必然的に店内の雰囲気が同じになってしまうのです。
そのため、北海道のA店、大阪府のB店、鹿児島県のC店を訪れても、店内写真を見せられただけではどの時計屋なのかわからないくらい、没個性的になっています。
メーカー側に言われるがままに什器を入れ、店員は研修でブランドにふさわしい立ち振る舞いを教育されるから、人も物もなおさら画一的な雰囲気になるというわけです。店の個性がどんどん失われています。
ちょうど、東横インに宿泊している者が感じることです。東横インの前社長が、「全国同じ造りだから、どこの東横インに泊まっているのかたまにわからなくなると言っていた利用者がいた」という趣旨をネタで話していました。それと同じ現象が、時計屋でも起こっているのです。
▼カマシマさんの問題提起
しかしながら、コスパ重視でビジネスライクの東横インとは違い、時計屋は本来であればそれと対極に位置する高級で非日常的な空間であるはずです。にもかかわらず、やっていることは同じなのです。
さらに言えば、店の雰囲気を全国同じで画一化させるのって、ユニクロやGUなどのファストファッションのブランドがもっとも積極的にやってきたこと、であるはず。高級ブランドこそ、店の雰囲気を地域風土にあわせて変えるなど、余裕をもった内装設計をすべきだと思うのですが、やっていることはファストファッション的なことです。
不思議だなあと思います。
「宇都宮の名店」ことカマシマさんが上記のような問題提起をしていました。これには全面的に同感です。
かつては時計屋、すなわち小売りが強い時代でした。ところが今はメーカーが強くなり、「提示する条件を呑めないから契約を打ち切ります」と言うようになりました。結果、メーカー主導の店づくりが進んでいるわけです。その結果、全国どこでも同じ雰囲気の店になっているわけです。
▼全国同じだと面白みがなくなる
カマシマさんが言っている通りだと思います。かっこいいけれど、画一的で、つまらない。店員も言っていることが同じだ。メーカーが提示する条件が呑めない店は淘汰され、資本力があり、メーカーの言いなりになっている店だけが生き残っていく。
これって健全なんでしょうかね?
カマシマさんはかなりの目利きです。ブライトリングを日本で最初期に販売した店として知られていますし、地方都市にありながら、バーゼルワールドに赴いて独自にブランドと契約を結び、代理店になるなど、先進的なことをどんどんやっています。
しかし、カマシマさんも言っていましたが、やはり専用の什器を入れない現状だと、契約を切られそうなブランドが多いとのことです。今のままのスタイルを貫くのは限界がありそうです。
ですが、こういった個性がある時計屋が、せめて、地域に1店くらいはあったっていいんじゃないかなと思います。
いかがでしょうか?