▼コレクションも遺族にとってはゴミ
よく、テレビ番組でコレクターの夫と妻が対立するシーンが出てきます。これはコレクターにとっては他人事ではないのではないでしょうか?
人が死ぬと、遺族によって遺品整理が行われます。その中で遺族に価値がわかられないと多くのものが捨てられてしまいます。
中野にある日本最大の漫画・アニメのコレクターズショップ「まんだらけ」が生前見積というシステムを整備しています。コレクターのコレクションを見積もり、まんだらけに売却した際の査定額を出してくれるというものです。
なぜこんなシステムができたのか興味があったので、「まんだらけ」を取材しました。辻中雄二郎副社長が回答してくださいましたが、コレクションが死後に捨てられる例が後を絶たず、貴重なマンガ本やおもちゃが失われるケースが少なくないためなのだそうです。
辻中さんによると、某漫画家のヴィンテージコミックを収集していた国内屈指のコレクターが死去した際、歴史的な価値の高い漫画本がほとんど捨てられてしまったそうです。「日本の漫画文化において大きな損失」と話していました。同感です。
▼高級腕時計も捨てられてしまう
以前に僕がツイッターで「高級腕時計が捨てられた例がある」と書いたら、そんなことはないだろう、嘘をつくなとDMが来ました。その方は周囲に信頼できる人がいるから、そう思えるのかもしれません。
しかし、ロレックスなら知っている人が多いかもしれませんが、世界三大ブランドのパテックフィリップ、ヴァシュロンコンスタンタン、オーデマピゲなどの腕時計ブランドは、知らない人が少なくないのではと思います。
ちなみに、僕の地元ではパテックフィリップですら、ゴミに出したという人がいるのです。さらに言えば遺体と一緒に棺に入れて焼いたという人もいます。
さらに、知人から聞いた話ですが、彼はフリーマーケットでパテックフィリップの某モデルをなんと50円で買ったことがあるそうです。50万円ではありません。50円です。50万円でも安いレベルなのですが、曰く「祖父の遺品で、電池が切れているから」と説明を受けたそうですが、その場で彼が竜頭を巻いたら動いたそうです。手巻きを多くの人は知らないんですね。
これはたまたま知識ある人のおかげで、貴重なモデルを救出できた稀有な例といえましょう。
▼普通のモノほど、残らない
ただ、高級なモノであればそれでもなんとか残る可能性があります。問題は、そのへんにありふれている普通のモノです。高級腕時計雑誌「クロノス」編集長の広田雅将氏がこのようにツイートしています。
高価でレアな時計が残るのは当たり前。そんなのを自慢されても、ふーんとしかいいようがない。むしろすり減って、やがて消えてしまう実用時計が、丁寧に使われていたり、きちんと直されているとグッときます。意図的に残そうと思わない限り、残らないですから。そういう時計って。
これは本当に同感です。普通のモノって本当に残らないのです。意識して残そうと思わないと、まず残りません。
漫画本の話に戻れば、戦後の漫画史において最重要な単行本である手塚治虫の『新宝島』は、一説によれば約40万部印刷されたといわれますが、ほとんどが現存していません。建築でも、上級農民や富裕層の家は比較的よく残っていますが、長屋などの庶民の家は数えるほどしか残っていないのです。
昨今、転売屋やフリマサイトを批判する声が大きくなっています。しかし、僕は二次流通、すなわち転売の仕組みが普及することは、悪いことだけではないと考えています。モノが価値のわかる人のもとに渡る可能性があるためです。
また、コレクターは、普段から家族の間でコレクションの価値を共有するように努めるべきだと思います。生前見積のようなシステムが、あらゆるコレクターの分野に広がることを祈りたいです。そして、コレクターはもっと自信を持つべきでしょう。コレクションは文化遺産の収集・保護に繋がっていると僕は思います。
https://twitter.com/HIROTA_Masayuki/status/10507829833496494