▼特産品のブランド化
地域活性化のテーマ・課題としてよく耳にするのが、「特産品のブランド化」だ。農産物から伝統工芸まで、ブランド化を図るべきものは数多い。
僕が手がけた「かがり美少女イラストコンテスト」の一環で製作された「美少女イラスト入りあきたこまち」などはその成功例として、NHKや全国紙で取り上げられまくった。
んで、その後、僕はいろいろな地方に「特産品のブランド化」をテーマに講演に呼ばれるようになった。
講演後、懇親会の席で、地域おこしにかかわっている人たちや、政治家と話をしたり、彼らを見ていて違和感を持った。彼らはブランド化、ブランド化と口にしまくる癖に、ブランドについて何も知らないのだ。
▼ブランドについて何も知らない
黒毛和牛のブランド化を図りたいと言っているくせに、例えば自分たちの地域以外のブランド牛を食べに行ったことがない。
鞄や工芸品のブランド化を図りたいと言っているくせに、他の地域の鞄や工芸品を見ていないし、なおかつブランドとして成功しているルイヴィトンやエルメスなどのラグジュアリーブランドにまったく関心がない。
これではブランド化など、成功できるわけがないと思った。で、実際に成功できていない。
地方の連中は、品質のいいものを作れば成功できると本気で信じている人が多い。しかし、今の時代、もはや品質がいいなんてのは、当たり前だ。どこで作られているものだって、一定の品質が保たれているのである。
粗悪品だと言われていた中国製品の品質は、今や日本製に迫るレベルになっているし、モノによっては日本製を抜いていると言われるものだってある。したがって、品質がいいものを作っただけでは、商売のスタートラインにすら立てていないのだ。
▼ブランド化のためにはまずブランド品を買うこと
ブランド化を図るためには、どうすればいいのか。まずはブランドを知ることだ。そのためにはブランド品を買ったり、触れたりして、体験しなければいけない。妄想は御法度だ。
これは、僕が理系だから余計に重要視するのかもしれない。僕はキノコ研究者を目指していたから、研究のためにキノコの実物を探し、標本を作ることは子どもの頃からの基本だった。ゆえに、「美少女イラスト入りあきたこまち」を作った時も、全国からコメを買いまくり、米袋のデザインを研究するところから始めている。
鞄を作っている業者が、本気でブランド化を図りたいと思っているのなら、自腹を切ってでも、ルイヴィトンやエルメスを買うだろう。買って使い勝手を研究するし、その歴史を探ろうとするだろう。ライバルを知ることは、商売の基本中の基本なのである。
それすらできない奴は、そもそも本気ではないのだ。本気じゃないからコストをかけない。しかし本来であれば、自腹を切って、自分で体験してみなければ、何もわからないのである。
何度も繰り返す。ブランド化を図りたいなら、まずブランド品を買うことが重要である。木下斉の本なんかを読むより、よっぽど有益だ。
▼政治家はブランド品を買いまくるべきだ
安倍晋三首相が羽後町に本社をおく協和精工のブランド「ミナセ」の腕時計を、自腹で買ったらしい。素晴らしいことだ。日本の製品を知り、海外に売り込もうという本気度を感じられる。
よく、政治家がブランド品を身に着けていたりすると叩く奴が、特に左寄りの奴らに多い。しかし、政治家はブランド品を身に着けるべきだ。経済を活性化させる効果があるし、何より、一流を知らなければ、世界に対して日本のモノづくりを売り込むことはできない。一流を知ってこそ、日本のモノづくりの良さも悪さも知ることができるのだ。
左寄りの連中が大好きな中小企業のモノづくりがなぜダメなのか。そいつらがブランドを知らないからである。と同時に、支援する政治家たちがブランドに興味がなく、さらに言えばセンスの欠片もないためだ。
ブランドを知らない政治家など、ブランド化などできるわけがないのである。日本の製品、日本の中小企業のモノづくり、日本の食文化、そして日本と言う国そのものに関しても、である。

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