かがり美少女の中の人ブログ

かがり美少女イラストコンテスト主催者の山内が、好き勝手なことをつぶやいています。最低最悪なクソな内容多し。今流行っている「自己責任」で読んでね( ^ω^ )。だから、たまに(いや、かなりの頻度で)嫌な感じのことを書きますが、ゆるしてニャン☆

バブル絶頂期、デイトナを買わずにデイデイトを買った人のお話

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↑ デイデイトはロレックスの最高峰と言われ、バブル期の日本では大人気だった。 写真:山内貴範(時計とフィギュアは中の人の私物)

 

デイトナよりもデイトジャスト

ロレックスの「デイトナ」は不思議な時計である。

現在、定価が約128万円だが、世界的に人気が高く入手困難であるため、並行価格で260万円ほどする。昨今は、毎日のようにロレックスを扱う店を巡回するデイトナランナー”と呼ばれる人々がいる。

しかし、その一方で、ある世代からすれば「これがそんなに人気があるの?」という反応が返ってくる時計でもある。ほんの30年ほど前まで、まったく人気のない時計だったからだ。店頭で売れ残りの常連だった。地方の時計店を回れば、「在庫処分で定価の半額で売った」という、今ではあり得ない話を耳にすることがある。

昭和から平成の過渡期、ロレックスの花形といえば、デイデイト、デイトジャストだった。以前にこのブログでインタビューした時計店によれば、ロレックスを扱う問屋から、「(人気のない)デイトナ仕入れてくれたら、人気のあるデイトジャストを回す」と言われたほどだという。それが今ではまったく逆である。

いかに、当時のデイトナが人気がなかったのかがわかるエピソードだ。

 

▼田舎で起こった腕時計ブーム

秋田県の公務員だった故・T氏は、平成元年(1989)、退職記念にデイデイトを買った。彼は死ぬまでその時計を愛用し、記念日の旅行では常に身に着けていた。ここから先の話は、彼へのインタビューの内容をもとにまとめたものである。

当時、秋田県内のある地域では、医者、弁護士、さらに裕福な農家を中心に高級腕時計を買うのがブームだったそうだ。ちなみにT氏によれば、当時の公務員は「肩身が狭かった」という。

「当時は、優秀な人は民間企業に入るか独立して店を持っていた。銀行も人気だったな。俺の兄弟には会社の社長になった人もいて、『公務員は仕事ができない人がなるものだ』と言われたけれど、懸命に頑張ってきた自負はある。

周りには羽振りのいい人がいて、飲み屋に行くと、パテックフィリップや、オーデマピゲの時計を自慢されたな。

僕は時計に興味なんかなくて、最初はどうしてそんなものを見せびらかすんだろうと、最初は嫌で仕方なかった。でも不思議なものでさ、欲しいという想いが募ってきちゃったんだよね(笑)」

 

▼パテックフィリップを買おうとするが・・・

彼はバブルの絶頂期に定年退職した。退職金を受け取り、いよいよ高級腕時計を買おうと決意したT氏は、記念に友人と一緒に東京に旅行をした。ちなみに友人は材木商を営む熱心な時計愛好家で、腕にはホワイトゴールドのパテックフィリップが輝いていたという。

寝台特急「あけぼの」に乗り、上野駅に到着。アメ横で朝食を摂ったのち、タクシーで浅草に移動して浅草寺を参拝。昼過ぎに百貨店へと向かった。お目当てはもちろん、パテックフィリップだった。

けれども、ショーケースに並んでいる時計の値札を見て、唖然とする。彼の予算では到底手が届くものではなかった。そこで、友人のアドバイスで方針を変更する。

「友人はロレックスが良いと言ってきたんだよ。ロレックスは僕の周りでは人気が無かったんだ。でも、友人が『パテックほどの高級感はないけれど満足できるはずだから、買った方がいい』と言ってきたんですよ。僕は彼を信頼していたし、彼が言うならロレックスもいいかなと思えてきたね」

そうは言っても、T氏にとって初めての高級腕時計である。ショーケースを隈なく見渡しながら吟味していると、ある時計に目が行った。

デイトナがあったんですよ。僕は結構、それがかっこいいと思って、試着もしてみた。でも、友人は『T君、それは人気のない、安っぽい時計ですよ。君は仕事を頑張ってきたんだし、そんなの買ってどうするの? 記念に買うなら金無垢じゃなきゃ!』と囃し立てるから、止めたんだよね」

 

▼買った時計を生涯、愛した

結果、一晩悩んだ末に、T氏が選んだのはデイデイトだった。ロレックスを代表する、金無垢の腕時計だ。

「大満足ですよ。もちろん、パテックは買えなかったし(笑)、昨今の値上がりを見るとデイトナを買っておけばよかったなと思ったことはある。でもそれは結果だからね。僕はデイデイトにして間違っていなかったと思うし、思い出は金額では替えられないと思っているよ」

パテックこそ買えなかったけれど、彼が生涯、そのロレックスを大切にしていたことは、保存状態からもわかる。買った日の保証書や箱、取扱説明書のみならず、購入した百貨店のレシートまで残してある。箱の中には「退職記念に購入」と、手書きのメモまで添えられている。几帳面な性格がよくわかるものだ。

彼は他の時計に浮気をせず、死ぬまでその時計を愛したのである。

ひとつひとつの腕時計には物語がある。T氏の話を聞くと、デイデイトが彼のもとに来たのもまた、運命だったのかなと感じずにはいられない。

 

REAL ROLEX(21) (CARTOPMOOK)

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